日本リハビリテーション連携科学学会について

歴代理事長

「学会設立15周年を迎えて」より

奥野 英子(第3代理事長)
奥野 英子(第3代理事長)
東日本大震災から2年が経過した2013(平成25)年になり、1999(平成10)年3月に創設された日本リハビリテーション連携科学学会は15周年を迎えました。毎年3月に14回にわたって大会が全国各地で開催され、学会の研究誌である「リハビリテーション連携科学」は19冊、会報「連携通信」は42号まで発行されました。

本学会は、医学的リハ、教育リハ、職業リハ、社会リハ、リハ工学など、総合的なリハビリテーションを構成する様々なリハビリテーション分野における各種リハビリテーション関係専門職50名が集まって設立準備会が結成されてスタートしましたが、現在は北海道から九州まで全国各地からの学会員が500名を超えています。今後も、本学会が担っている役割、目的、活動に賛同する方々が本学会に入会して下さることを期待しています。

これまで本学会では、リハビリテーションの連携を実現するために、毎年開催される大会において「連携」に関するテーマを掲げ、基調講演、特別講演、シンポジウム、セミナー等を開催してきました。15周年を迎えて、これまでに蓄積された検討結果や調査研究の結果等を振り返り、これからの学会のあり方や進むべき道筋を検討し、本学会が目指してきた目的を実現することが期待されています。これまでの大会の開催地、大会長、大会テーマ等は表の通りです。

わが国においては、2000(平成12)年度から介護保険制度が開始され、主に介護を要する高齢者を対象に通所リハビリテーション、訪問リハビリテーションが事業化されました。課題は多々ありますが、介護保険制度下におけるリハビリテーションサービスの存在により、地域リハビリテーションの基盤はできたと言えるかも知れません。しかし、「地域リハビリテーション広域支援センター」が十分に機能していないことや、「地域包括支援センター」との連携体制がない中で、安定的で確実な地域リハビリテーション体制ができているとは言えません。

一方、障害児・者のリハビリテーションについては、障害福祉制度改革の中でリハビリテーションが薄くなっています。従来はリハビリテーションを目的とする障害別の更生施設が100以上全国にありましたが、障害種別がなくなり、更生施設は障害支援施設に一本化され、措置費から介護保険と同じような報酬制度になりました。その結果、経済的に厳しくなり、リハビリテーションサービスを提供する専門職を置くことすらできなくなったという声を多く聞きます。このようなわが国における現状は、総合的なリハビリテーションの危機状態ではないでしょうか?

1965(昭和40)年に「理学療法士及び作業療法士法」が制定されて以来、医学的リハビリテーションを担う専門職は分化・高度化していますが、職業リハビリテーションや社会リハビリテーションの分野は発展していると言えるでしょうか? 東日本大震災、その後の原発問題、長期にわたる経済的危機など大きな問題に直面している中で、リハビリテーションも厳しい状態にあると思います。このような中で、障害のある方々(児童、青年、壮年、高齢者などすべて)の自立、社会参加、QOLの高い生活を実現できるように、本学会はリハビリテーション関係諸学会、関係諸専門職団体、関係機関等と連携をとり、障害当事者の視点に立ったリハビリテーションサービスが、適切な時期に適切な質と量で提供できるようにするための努力が求められています。

今年度は本学会の役員改選が行われます。本学会の一層の発展のために、本学会の目的を共有し、協働する意思をもち、コミュニケーションが十分に取れる新たな役員体制になり、すべての学会員同士の連携がとれる学会になることを願っています。

最後になりますが、これまでの本学会大会の開催地、大会長、大会テーマ等を掲載し、これらの大会を開催してくださった関係者の皆様に感謝申し上げますとともに、来年3月15日(土)、16日(日)に開催される第15回大会で皆様とお会いできることを楽しみにしています。

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